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いえ
家
島崎 藤村
02 (下)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 141,411 字 · 285 页
榊は大分酔った。若い方が御辞儀をして帰りかける頃は、榊は見るもの聞くもの面白くないという風で、面のあたりその妓を罵った。そして、貰って帰って行った後で、腐った肉にとまる蠅のように言って笑った。折角楽みに来ても、楽めないでいるような客の前には、中年の女が手持無沙汰に銚子を振って見て、恐れたり震えたりした。
酒も冷く成った。
ボーンという音が夜の水に響いて聞えた。仮色を船で流して来た。榊は正太の膝を枕にして、互に手を執りながら、訴えるような男や女の作り声を聞いた。三吉も横に成った。
三人がこの部屋を離れた頃は、遅かった。屋外へ出て、正太は独語のように、遣瀬ない心を自分で言い慰めた。
「今に、ウンと一つ遊んで見せるぞ」
「小泉君、君は帰るのかい……野暮臭い人間だナア」
と榊は正太の手を引いて、三吉に別れて行った。
三吉は森彦から手紙を受取った。森彦の書くことは、いつも簡短である。兄弟で実の家へ集まろう、実が今後の方針に就いて断然たる決心を促そう、と要領だけを世慣れた調子で認めて、猶、物のキマリをつけなければ、安心が出来ないかのように書いて寄した。
弟達は兄を思うばかりで無かった。