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いえ
家
島崎 藤村
01 (上)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,748 字 · 254 页
年頃に成る子は多勢あっても、いざ町から貰うと成ると、適当な候補者は見当らなかった。
「飯田の方の話よなし」とお種は嘉助の方を見て、「あれを一つお前に聞いて貰うぞい」
「ええ、あれは引受けた」と嘉助が言った。
三吉は聞咎めて、「飯田の方に候補者でも有るんですか」
「ナニ、まだそうハッキリした話では無いんですがね、すこしばかり心当りが有って」と達雄は膝を動かす。
「聞き込んだ筋が好いもんですから」とお種も三吉に言い聞かせた。「今年の秋は、嘉助も彼地へ行商に出掛けるで、序に精しく様子を探って貰うわい――吾家でお嫁さを貰うなんて、お前さん、それこそ大仕事なんですよ」
この人達は、子と子の結婚を考える前に、先ず家と家の結婚を考えなければ成らなかった。
何時の間にかお仙も母の傍へ来て、皆なの話に耳を傾けていた。やがて母が気が付いた頃は、お仙の姿が見えなかった。お種は起って行って、何気なく次の部屋を覗いて見た。
「お仙、そんなところで何をしてるや……」
娘は答えなかった。
「この娘は、まあ、妙な娘だぞい。お嫁さんの話を聞いて哀しく成るような者が何処にあらず」とお種は娘を慰撫めるように。