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いえ
家
島崎 藤村
01 (上)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,748 字 · 254 页
何卒して彼の思うことも遂げさして遣りたいものですよ」
身内のものの噂は自然と宗蔵のことに移った。
「宗さんですか」とお倉はさもさも厄介なという風に、「世話してくれてる人がよく来て話します。まあ心はどれ程御強健なものか知れませんなんて……こういう中でも、貴方、月々送るものは送らなけりゃ成りません。森彦さんも御大抵じゃ有りませんサ」
「彼は小泉の家に附いた厄介者です。どうしてまたあんな者が出来たものですかサ」
「もう少し病人らしくしていると可いんですけれど、我儘なんですからねえ――森彦さんはああいう気象でしょう、真実に宗蔵のような奴は……獣ででもあろうものなら、踏殺してくれたいなんて……」
お倉やお種が笑えば、お俊も随いて笑った。この謔語は、森彦でなければ言えないからであった。
やがて別れる時が来た。
「三吉さんの許へいらっしゃいましたら、俊や鶴のことを宜敷御願い申しますッて、そう仰って下さい……何卒……」
こう力を入れて頼むお倉の言葉を聞て、お種は小泉の家を出た。
東京を発つ朝は、お種は豊世やお俊やお鶴などに見送られた。豊世は幾度か汽車の窓の下へ来て、涙ぐんだ眼で姑の方を見た。