轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

いえ

家

島崎 藤村

01 (上)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,748 字 · 254 页

青空文庫

正太も広い部屋の真中へ大きな一閑張の机を持出した。こうして、二人ぎりで、楽しい雑談に耽るにつけても、正太はこの叔父の何時までも書生でいられるのを羨ましく思った。叔父がここへ来て何を為ようと、何を考えようと、誰一人気を揉む者も無い。それに引きかえて、正太は折角思い立った東京の遊学すら、中途で空しく引戻されて了った。やれ大旦那が失敗したから、若旦那には学問は無用だことの、やれ単独で都会に置くのは危いことの、種々な故障が薬方の衆から出た。「家なぞはどうでもいい」と思うことは屡々有ったのである。

この座敷から谷底の方に聞える木曾川の音も、正太には何の新しい感じを起させなかった。彼は森林の憂鬱にも飽き果てた。「こうして――一生――山の中に埋れて了うのかナア」それを考えてみたばかりでも、彼には堪え難かった。どうかすると、彼は話の途中で耳を澄ました。そして、引入れられるような眼付をして、熟と渓流の音に聞き入って。

お種が入って来た。

「ネブ茶を香ばしく入れましたから、持って来ました」とお種は款待顔に言て、吾子と弟の顔を見比べて、「正太や、叔父さんにも注いで進げとくれ」