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さびしきうお
寂しき魚
室生 犀星
「赤い鳥」1920(大正9)年12月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,800 字 · 10 页
かれはその光に打たれるごとに、喜ばしそうにからだをすこしずつ動かすのであった。そうするときにのみ、かれのからだは生きているように見えるのです。そのほかは、いつも、じっと死んだようになって動かないでいるのでした。
夜はちょうどこの沼から三里ばかり離れている大きな都会には、盛りあがるような電燈の海が波うっていて、それが非常な巨大な軍艦のように黒ずんで、どっしりと重々しくなって見えるのです。ちょうどその余映のような、ほんのりした明るみが、この沼の水の上にも、あるかないかほどの明るみを浮ばしてくるのでした。
魚はその蛍のあかりのようなものをまで懐しそうに、からだに吸いとるようにしていたのです。
「おれは晩になると、このほんのりした光さえ慕わしくなるのだ。あの明るい賑やかなところはいったいどこのあたりにあるのだろう。そうして、それがおれには何故見ることをゆるされないのであろうか。こうして、からだにまで光をうけて、おれはいつそこへゆけるのだろうか。」
かれはそう考えると、青い目で、そらの方をゆっくりと眺めるのでした。空には大きな都会のさまざまな街々の姿や賑やかさ、または音楽や燈影が、まるで地図のように広げられてくるのでした。