轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ふじ

富士

岡本 かの子

「文芸」1940(昭和15)年11月号~1941(昭和16)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,579 字 · 82 页

青空文庫

「わたくしが、物ごころついた時分からでも、この大地の上に、四たびほど、それはそれは永く冷たい歳月と、永く暖かい歳月が、代る代る見舞うたのでありました」

冷たい時期の間は、鈍く寒い大気の中に、ありとあらゆるものは、端という端、尖という尖から、氷柱を涙のように垂らして黙り込んでいた。暖かい時期の間は、このわたりの林の中にもまめ桜が四季を通して咲き続け、三光鳥のギーッギーッという地鳴き一年じゅう絶間なかった。

「そして只今、この大地は、四度目に来た冷い時期の、そのまた中に幾たてもこまかく冷温のきざみのある、ちょうどその二つ目の寒さの峠を下り降った根方の陽気の続いている時期にあるのでございます」

まめ桜はひと年の五月に一度咲き、同じその頃、三光鳥はこの裾野の麓へ来て鳴く。生けるものにはここしばらく住み具合のよい釣合いのとれた時期の続きであるだろう。

「この大地は、島山になっております。蜻蛉の形をしたこの島山の胴のまん中に、岩と岩との幅広い断れ目の溝があって、そのあわいから、わたくしは生い立たせられつつあるのを見出したのでした」

西の海を越えて、うねって来た二つの大きな山の脈系、それは島山の胴の裂け目を界にして南北に分けられる。