轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ふじ

富士

岡本 かの子

「文芸」1940(昭和15)年11月号~1941(昭和16)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,579 字 · 82 页

青空文庫

一甕の酒も備えてある。

狩の慰みにもと長押に丸木弓と胡が用意されてあった。

息子の夫妻は朝夕の間候を怠らず、食事どきの食事はいつも饗宴のような手厚さであった。

息子夫妻のそつの無い歓待振りはまことに十二分の親孝行に違いなかった。普通にいえばこれで満足すべきであろう。だが父の祖神の翁には物足りないものがあった。

息子夫妻が父の祖神の翁に顔を合すとき、大体話は山の生産の模様、山民の生活の状況、それ等を統ねて行く岳神としての支配の有様、そのようなものであった。それは誰が聴いても円満で見上げたものであった。山民間に起った面白そうな出来事を噂話のように喋っても呉れた。だが、それだけだった。

親子関係を離れて誰に向っても話せる筋合いの事柄ばかりである。折角、親子がたまにめぐり合うのは、もっと心情に食い込んだ、親子でなければできないという気持の話はないものか。人知れない苦労というものが息子の岳神にはないのか、囁いて力付けて貰ったり、慰めて貰ったりしたい秘密性の話はないのか。

気を付けてみるのに、息子の岳神のこの公的な円満性は、妻に対してでもそうであった。

夫妻は睦くて仲が良い。