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てらだせんせいのついおく
寺田先生の追憶
中谷 宇吉郎
――大学卒業前後の思い出――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,152 字 · 26 页
こういう風にして始められた研究が、その姿のままで続けられて立派な結果を得たのではないが、この程度ででもよいからとにかく始めなければ、決して後年のような実は結ばなかったであろう。
水素の方の仕事は、この中では比較的大がかりなのであったが、それでも水素のボムベと目盛りした硝子のU字管と、小さい変圧器位の設備で、どんどん曲線は採れて行った。そうしてこの仕事をしていなかったら、飛行船爆破の原因探究という実験も出来なかったであろうという気がする。
機械や設備が立派に揃えばそれに越したことはないが、そんなものがなくても或る程度の研究は出来るということは、よく言われる通りである。しかし実際にはあの当時の設備と人員とで、とにかく研究を始めて、それを或る程度まで進行させるということは、そう易しいことではない。この頃になって私もやっとそういうことが分って来た。立派な機械を使ってつまらぬ仕事をすることは易しいが、その反対の場合はむつかしい。それは当り前のことであるが、自分が一人立の立場に置かれて、実際に事に臨んで見ると、改めて考えさせられることが多い。
今から考えて見ると、あの頃私たちは、寺田先生のああいう研究のやり方を、そう特別に困難なこととは気がつかないでいた。