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てらだとらひこのついそう
寺田寅彦の追想
中谷 宇吉郎
「寺田寅彦の追想」甲文社、1947(昭和22)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,683 字 · 40 页
待ちに待った無電発信器の部品が届いたのは、二月六日のことであった。持って来た技師の人は、親切にいろいろと使用法を教えてくれた。早速やってみると、アンテナ電流で充分スパークが出る。もうアース電流だけ調べてみれば、それでこの研究も大団円であると、大いに勉強してみたが、肝腎のその方は駄目なようである。球皮を入れるとすぐ発信が止まってしまうので、スパークは勿論出ない。少々心細くなったところに、海軍省から、「SS航空船爆破の実験はいつ見せてくれますか」という二度目の電話が来る。「今夜は徹夜だぜ」と湯本君と二人で、大いに悲壮なつもりの決心をした。ところが夜になって、気がついたことは、ゴンドラに相当する電気容量がはいっていないということである。なあんだということになって、早速適当な容量を入れてやってみると、盛んにスパークが出る。そしてそのスパークでどんどん水素のゼットが点火する。「水素点火、万歳、二月九日」と、実験帳に書いて、意気揚々として帰って行った。幸先のよいことには、この日の朝、海軍某少将が実験を見に来て、研究の重要性を認めて、研究費年額一千円を出してくれることになったことを先生から聞いていたので、勇気百倍していたわけである。