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あひるとさる

寺田寅彦随筆集 第五巻

寺田 寅彦

寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第五巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:あひると猿、疑問と空想、映画と生理、映画雑感(Ⅲ)、映画雑感(Ⅳ)、災難雑考、三斜晶系、糸車、詩と官能、自由画稿、小浅間、小爆発二件、地図をながめて、天災と国防、日本人の自然観、破片、俳句の型式とその進化、俳句の精神、物売りの声、B教授の死。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,515 字 · 389 页

青空文庫

どうもそうとは限らないであろうと思われた。この場合にこの人たちをこんなにたわいなく笑わせているのは談話の内容よりもむしろこれらの人の内的外的な環境条件ではないかという気がした。

午前中忙しく働く。それが正午のベルだか笛だかで解放され向こう一時間の自由を保証されて食堂へかけ込む。腹が相当に減っている。まさに眼前に現われんとするごちそうへの期待が意識の底層に軽く動揺している。こういう瞬間が最もたわいのない軽口とそれに対する爆笑を誘発するに適当なものではないか。とにかく、これも未来の生理学的心理学者の研究題目の一つにはなりそうだと思われた。

そのうちうなぎどんぶりが三人の前に運ばれて食事が始まると同時に今までの間欠的爆笑がぴたりと止まってしまった。食事をしながらも低声で談話は進行していたが、今までとちがって話が急に何か知らないがまじめな軌道へはいり込んだかのように見えた。

食事のあとでりんごか何か食っていたようであったが、とにかく三人のムードが、食前とはすっかり一変して、なんとなく気重く落ち着いた、眠ったいような雰囲気がその食卓の上にただよっているように感ぜられた。