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あひるとさる
寺田寅彦随筆集 第五巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第五巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:あひると猿、疑問と空想、映画と生理、映画雑感(Ⅲ)、映画雑感(Ⅳ)、災難雑考、三斜晶系、糸車、詩と官能、自由画稿、小浅間、小爆発二件、地図をながめて、天災と国防、日本人の自然観、破片、俳句の型式とその進化、俳句の精神、物売りの声、B教授の死。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,515 字 · 389 页
というふうに響くのであった。おそらく今ではもうどこへ行ってもめったに聞かれない田園の音楽の一つであろうと思われる。
明治二十七八年日清戦争の最中に、予備役で召集されて名古屋の留守師団に勤めていた父をたずねて遊びに行ったとき、始めて紡績会社の工場というものの見学をして非常に驚いたものである。祖母が糸車で一生涯かかって紡ぎ得たであろうと思う糸の量が数え切れない機械の紡錘から短時間に一度に流れ出していた。そこにはあのゆるやかな抑揚ある四拍子の「子守り歌」の代わりに、機械的に調律された恒同な雑音と唸り音の交響楽が奏せられていた。
祖母の紡いだ糸を紡錘竹からもう一ぺん四角な糸繰り枠に巻き取って「かせ」に作り、それを紺屋に渡して染めさせたのを手機に移して織るのであった。裏の炊事場の土間の片すみにこしらえた板の間に手機が一台置いてあった。母がそれに腰をかけて「ちゃんちゃんちゃきちゃん」というこれもまた四拍子の拍音を立てながら織っている姿がぼんやりした夢のような記憶に残ってはいるが、自分が少し大きくなってからは、もうこの機はあまり使われなかったらしい。しかし自分の姉の家ではその老母がずっとあとまで、自分らの中学時代までも、この機織りを唯一の楽しみのようにして続けていた。