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あひるとさる

寺田寅彦随筆集 第五巻

寺田 寅彦

寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第五巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:あひると猿、疑問と空想、映画と生理、映画雑感(Ⅲ)、映画雑感(Ⅳ)、災難雑考、三斜晶系、糸車、詩と官能、自由画稿、小浅間、小爆発二件、地図をながめて、天災と国防、日本人の自然観、破片、俳句の型式とその進化、俳句の精神、物売りの声、B教授の死。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,515 字 · 389 页

青空文庫

この二老人はたぶん自分の郷里の人でだれか同郷の第三者のうわさ話をしながら、そういう適切な方言を使ったことと想像される。

それはなんでもないことであるが、私がこの方言を聞いてびっくりして二人の顔を見たときに二人の顔が急に自分に親しいもののように思われて来て、なんだかずっと昔郷里のどこかで見たことがあるか、あるいは自分のよく知っているだれかによく似ているかどちらかであるような気がして来たのであった。

これは単に久しぶりに耳にした方言のよび起こした錯覚であったかもしれない。しかしまた郷里のような地理的に歴史的に孤立した状態で長い年月を閲して来た国の民族の骨相には、やはりその方言といっしょにこびりついた共通な特徴があるのではないかという疑いも起こるのであった。

また別なとき同じ食堂でこのかいわいの銀行員らしい中年紳士が二人かなり高声に私にでも聞き取れるような高調子で話しているのを聞くともなく聞いていると、当時の内閣諸大臣の骨相を品評しているらしい。詳細は忘れたが結局大臣には人相が最も大切な資格の一つであって、この資格の欠けている大臣は決して長続きしないといったようなことを一人が実例をあげて主張していた。