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あひるとさる
寺田寅彦随筆集 第五巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第五巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:あひると猿、疑問と空想、映画と生理、映画雑感(Ⅲ)、映画雑感(Ⅳ)、災難雑考、三斜晶系、糸車、詩と官能、自由画稿、小浅間、小爆発二件、地図をながめて、天災と国防、日本人の自然観、破片、俳句の型式とその進化、俳句の精神、物売りの声、B教授の死。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,515 字 · 389 页
西洋でもおそらく同様であったろうと想像される。ドイツやフランスの田舎の町の「市」の光景は実によく自分の子供のころの田舎の市のそれと似かよったものをもっていたようである。
子供の時分にそうした市の露店で買ってもらった品々の中には少なくも今のわれわれの子供らの全く知らないようなものがいろいろあった。
肉桂の根を束ねて赤い紙のバンドで巻いたものがあった。それを買ってもらってしゃぶったものである。チューインガムよりは刺激のある辛くて甘い特別な香味をもったものである。それから肉桂酒と称するが実は酒でもなんでもない肉桂汁に紅で色をつけたのを小さなひょうたん形のガラスびんに入れたものも当時のわれわれのためには天成の甘露であった。
甘蔗のひと節を短刀のごとく握り持ってその切っ先からかじりついてかみしめると少し青臭い甘い汁が舌にあふれた。竹羊羹というのは青竹のひと節に黒砂糖入り水羊羹をつめて凝固させたものである。底に当たる節の隔壁に錐で小さな穴を明けておいて開いた口を吸うと羊羹の棒がなめらかに抜け出して来る、それを短く歯でかみ切って食う、残りの円筒形の羊羹はちょっと吹くとまた竹筒の底に落ち着くのである。