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あひるとさる
寺田寅彦随筆集 第五巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第五巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:あひると猿、疑問と空想、映画と生理、映画雑感(Ⅲ)、映画雑感(Ⅳ)、災難雑考、三斜晶系、糸車、詩と官能、自由画稿、小浅間、小爆発二件、地図をながめて、天災と国防、日本人の自然観、破片、俳句の型式とその進化、俳句の精神、物売りの声、B教授の死。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,515 字 · 389 页
関東大震災にはたぶんあのへんも焼けたであろうが、つい先日電車であのへんを通るときに気をつけて見ると昔と同じ場所と思わるる所に二軒の黒焼き屋が依然として存在している。一軒は昔ふうの建築であり他の一軒は近代的洋風の店構えになっているのであるが、ともかくも付近に対して著しく異彩を放つ黒焼き屋であることには昔も変わりはないようである。
いったい黒焼きがほんとうに病気にきくだろうかという疑問が科学の学徒の間で問題に上ることがある。そういう場合に、科学者にいろいろの種類があることがよくわかる。
甲種の科学者は頭から黒焼きなんかきくものかと否定してかかる。蛇でもいもりでも焼いてしまえば結局炭と若干の灰分とになってしまうのだから、黒焼きがきくものなら消し炭を食ってもきくわけだ、とざっとこういうふうに簡単に結論を下してしまう。
乙種の科学者は、そう簡単にも片付けてしまわない。しかし、問題がまだアカデミックな研究にかけるにはあまりになまなましくて、ちょっと手がつけられそうもないから、そういう問題はまずまず敬遠しておくほうがいいという用心深い態度を守って、格別の興味を示さない。