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あひるとさる

寺田寅彦随筆集 第五巻

寺田 寅彦

寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第五巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:あひると猿、疑問と空想、映画と生理、映画雑感(Ⅲ)、映画雑感(Ⅳ)、災難雑考、三斜晶系、糸車、詩と官能、自由画稿、小浅間、小爆発二件、地図をながめて、天災と国防、日本人の自然観、破片、俳句の型式とその進化、俳句の精神、物売りの声、B教授の死。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,515 字 · 389 页

青空文庫

そういう写真をよくよく見ていると、美しいには実に美しいが、何かしら一つ肝心なものが欠けているような気がする。それが欠けているためにこの美しい部屋が自分をいっこうに引きつけないばかりか、なんとなく憂鬱に思われてしかたがない。何が欠けているかと思ってよく考えてみると、「窓」というものが一つもない。

窓のない部屋はどんなに美しくてもそれは死刑囚の独房のような気がする。こういう室に一日を過ごすのは想像しただけでも窒息しそうな気がする。これに比べたら、たとえどんなあばら家でも、大空が見え、広野が見える室のほうが少なくも自由に呼吸する事だけはできるような気がする。

汽船でも汽車でも飛行機でも、一度乗ったが最後途中でおりたくなっても自分の自由にはおりられない。この意味ではこれらは皆一種の囚獄である。しかし窓から外界が見える限り外の世界と自分との関係だけはだいたいにわかる、もしくはわかったつもりでいられる。これに反して窓のない部屋にいるときには外界と自分とのつながりはただ記憶というたよりない連鎖だけである。しかし外界は不定である。一夜寝て起きたときは、もうその室が自分を封じ込んだまま世界のいずこの果てまで行っているか、それを自分の能力で判断する手段は一つもないのである。