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あひるとさる
寺田寅彦随筆集 第五巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第五巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:あひると猿、疑問と空想、映画と生理、映画雑感(Ⅲ)、映画雑感(Ⅳ)、災難雑考、三斜晶系、糸車、詩と官能、自由画稿、小浅間、小爆発二件、地図をながめて、天災と国防、日本人の自然観、破片、俳句の型式とその進化、俳句の精神、物売りの声、B教授の死。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,515 字 · 389 页
これは市民の出足がなんとない不安のためにいくぶん止められたためかと想像された。しかしまた、乗り換え切符を出さなくなったために乗客の選ぶコースが平常と変わり、その結果としていつもは混雑するある時刻のある線路が異常に閑散になったというような現象もあるらしく思われた。この異常時の各線路の乗客数の調査をしたら市電将来の経営について非常にいい参考資料が得られるであろうと思ったが、しかし電気局ではその当時それどころの騒ぎではなかったであろう。
背広服の運転手や車掌はなんとなく電車内の空気をなごやかにする。いつもは生きた機械か、別世界から出張した人間のように思われるこれらの従業員が、こうして見るとやはり乗客の自分らと同じ人種に見えるから妙である。昔北欧を旅行したとき、たしかヘルシングフォルスの電車の運転手が背広で、しかも切符切りの車掌などは一人もいず、乗客は勝手に上がり口の箱の中へかねて買い置きの白銅製の切符を投げ入れていたように記憶している。こんなのんびりした国もあるのかと思ったことであった。
今度の素人従業員は素人だけにいろいろのエピソードをこしらえた。室町から東京駅行きのバスに乗ったら、いつものように呉服橋を渡らずに堀ばたに沿うて東京駅東口のほうへぶらりぶらりと運転して行く。