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あひるとさる

寺田寅彦随筆集 第五巻

寺田 寅彦

寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第五巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:あひると猿、疑問と空想、映画と生理、映画雑感(Ⅲ)、映画雑感(Ⅳ)、災難雑考、三斜晶系、糸車、詩と官能、自由画稿、小浅間、小爆発二件、地図をながめて、天災と国防、日本人の自然観、破片、俳句の型式とその進化、俳句の精神、物売りの声、B教授の死。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,515 字 · 389 页

青空文庫

またそれゆえにそれらの語彙が民族的遺伝としての連想に点火する能力をもっているのである。

しかしまたこれらの語彙の意義内容は一方では進化し発展しつつ時代に適応するだけの弾性をもっている。「春雨」はビルディング街に煙り「秋風」は飛行機の翼を払うだけの包容性を失わないのである。

こう考えて来ると、和歌と俳句は純粋な短詩の精神を徹底的に突きつめたものであり、またその点で和歌よりも俳句のほうがいっそう極度まで突きつめたものだということになるのである。

俳句における季題の重要性ということも同じ立場からおのずから明白であろう。限定され、そのために強度を高められた電気火花のごとき効果をもって連想の燃料に点火する役目をつとめるのがこれらの季題と称する若干の語彙である。

有限な語彙の限定は形式の限定と同様往々俳句というものの活動の天地を限定するかのような錯覚を起こさせる。近ごろいろいろの無定形無季題短詩の試みがあるのは多くはこの錯覚によるのではないかと想像される。しかし人間と化合した有機的の「春雨」「秋風」はその言葉の外形は不変であっても、その内容は人間社会とともに進化の歩みを止めることはない。