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ちいさきいえのせいかつ

小さき家の生活

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第十五巻」河出書房、1953(昭和28)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,540 字 · 18 页

青空文庫

なりふりにかまわない自分が、いつ誰が来るか分らないと思って机に向って居るのは、実にいやだ。

そればかりでなく、ぴったりと生活が落付かず、何だか借りもののようで、不満が裡に満ちる。仕事も出来ない。

此の状態は、自分にとって長すぎる程継続した。随分煩悶した。自分等の生活が肉感的なので仕事が出来ないのかと思ったり、Aが性格的に自分を煩すのかと思ったり。――然し今、自分には、それ等も少しはあったかも知れないが、要するに、現在日本の社会状態に於ては、芸術に携る女性は、主婦として全責任を帯びたのでは、決して仕事に没頭出来ないと云うことが分った。

自分と云う人並、芸術家は、日常生活に於ても、人並に芸術家として存在する。

女性らしい、或は自分のように家庭を愛し、良人や自分をニートな生活で育てたいと思う者は、どうしても、毎日の生活を、バーレンなものにはして置けない。食事にしろ、部屋にしろ、何しろ気を配る。「人」は、愛する者に奉仕せずには居られない。然し、一方芸術のことは、箇人の全的統一と燃焼とを要求する。

此処に、家庭の主婦として芸術に指を染めようとする者と、先ず芸術を本領とし、愛する者の伴侶であろうとする者との、截然岐るべき点がある。