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こゆびいっぽんのおおじあい

小指一本の大試合

山中 峯太郎

「少年倶楽部」講談社、1931(昭和6)年1月号

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,932 字 · 13 页

青空文庫

フランクもボンヤリしてる。ところが、見ると、ブルが倒れたままだ。テニスコートのかたいコンクリートの上へ、背負いなげでたたきつけられて、長くなってる。いってみると、目をまわしてるんだ。そこでぼくがうつむいて、手をのばすと、見物人がシーンとしずまった。――よし! と、ぼくは考えて、ブルの腹の上へ、うつむいた。柔道には「腹活」という手がある。腹へ活を入れて、目をまわしてる相手の息をふきかえさせる、これまた術だ。ぼくは、ブルの腹へ、右手で、

「エイッ!」と、活を入れて、左の小指をスッと上げた、そしてヒクヒク動かしてるうちに、

「ウウーン」ブルが、うなると、ムクムク起きあがった、が、ぼくの顔と小指を見ると、おそろしそうに顔色をかえた。

「どうだ? ポール!」と、いうと、

「…………」ブルのポールが、ふるえながら、ぼくの右手をにぎりしめて頭を下げた。

見物人がみんな四方からワアーッとおりて走ってきた。

あとはいわなくてもいいだろう。ポールはおとなしくなって、ラサハ倶楽部は「友だちの愛」でさかんになるし、倶楽部長フランクは大よろこびさ。なに? 懸賞の二十万円なんか、だれがもらうものか、ミス・ネールにソックリ返してやったよ。