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こゆびいっぽんのおおじあい

小指一本の大試合

山中 峯太郎

「少年倶楽部」講談社、1931(昭和6)年1月号

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,932 字 · 13 页

青空文庫

どうもしかたがない

「エッ、きみ、すると、勝てるつもりかい、ほんとうに?」

「そうさ、日本人は勝つといったら勝つよ」

「フウム、やはり、拳闘でやるかい? 試合となったら」

「なあに、拳闘なんか、いらないだろう。ブルが相手なら。そうだね、まず、小指一本さ」

「エエッ? 小、小指、一本? きみ、それあ、まったくかい? 小指一本?」

と、うっかり「小指一本」とぼくがいったのを、倶楽部長のフランクは、びっくりしてしまって、自分の小指を出して見せながら、

「こ、これで、きみ、ブルに勝つというのかい?」と、目をみはって、真剣にたずねる。

さあぼくは弱った。フランクの真剣な顔を見ると、「いまいったのはちがうよ、うそだよ、冗談だよ」ともいえなくなってしまった。しかたがないから思いきって、

「ウン、まず小指一本、……で、いいだろう」と、いうと、

「ありがたいッ! 実にありがたい!」と、フランクが、いきなり立ち上がった。と思うと、

「きみはラサハ倶楽部の救い主だ!」と、大声でさけびだしながら、部屋を出ていってしまった。

どうもしかたがない

これからがたいへんだ。フランクが倶楽部じゅうのものに、「内村は小指一本でポールに勝つといってる」