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こばやしさんとわたしのツキアイ

小林さんと私のツキアイ

坂口 安吾

「小林秀雄全集 第八巻月報第七号」東京創元社、1951(昭和26)年3月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,871 字 · 4 页

青空文庫

たろうと思う。

小林さんは頭髪ボウボウ、あのときは人相がよくなかったね。彼は「オフェリヤ遺文」を書いてる最中であった。書き悩んでいたのであろう。書けない、ということを云っていた。フム、深刻そうな顔をしていやがるなア、というのがその時の私の印象であった。そのほかに特にこれという印象はない。あの席で私が一番ハッキリ印象しているのは、徹ッちゃんだ。小林と何かカラミあって、つまり、酔っぱらって論争したという意味だ。ちょッと言葉がつまったんだね。青山がニヤニヤと河上をうち見て、

「二の句のつげない顔をしてやがるよ」

と言った。四五秒して徹ッちゃんキッと顔をあげて、同時になんとなくボンヤリと立ち上ったような記憶がある。そして、「二の句のつげないことは、わるいことか」と、云やアがったね。なかなかよろしい武者ぶりであったよ。

その半年ぐらい後だろう。春陽堂から「文科」という半営業的な同人雑誌がでた。同人の頭主格は牧野さんで、小林、河上、中島健蔵、嘉村礒多、ほかに誰がいたッけな、そして私などが同人であった。表紙は青山二郎であった。そのころ春陽堂の近所にウィンザアというバアができて、同人のたまり場であった。