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しょうじょじごく
少女地獄
夢野 久作
「少女地獄」黒白書房、1936(昭和11)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,174 字 · 206 页
少なくとも一度、K大の耳鼻科に電話をかけて彼女の身元を幾分なりとも洗って見た上で雇い入れるのが常識的である事に気付くであろう。
けれどもその時の私等はそうした軽率さを微塵も感じなかった。彼女の容姿と言葉付の吸い寄せるようなあどけなさが、彼女の周囲を渦巻きめぐっているであろう幾多の現実的な危険さに対する私等のアラユル常識を喚起して、一種のローマンチックな、尖鋭な同情の断面を作って彼女に働きかけさせた事を私等は否定出来ないであろう。その翌る日、
「ねえお姉様。あの娘が万一、看護婦が駄目だったら女中にでも使って遣りましょうよ。ねえ、可哀そうですから」
「まあ。妾もアンタがその気ならと思っていたとこよ。追々お客様も殖えるでしょうから」
と二人が相談し合ったくらい姉と妻は彼女に対して乗気になっていたらしい。
そればかりじゃない。なおその上にモウ一つ。これは私の職業意識とでも言おうか。私が彼女を見た時に、第一に眼に付いたのは彼女の鼻梁であった。
彼女は決して美人という顔立ではなかった。眼鼻立はドチラかと言えば十人並程度で、色も相当に白かったが、背丈が普通よりも低く五尺チョットぐらいであったろう。