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しょうじょじごく
少女地獄
夢野 久作
「少女地獄」黒白書房、1936(昭和11)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,174 字 · 206 页
彼女独特のモノスゴイ嘘吐きの天才が、すこし落ち着くに連れて、モリモリと異常な活躍を始めたのは、是非もない次第とでも言おうか。
彼女の異常な天才が、K大耳鼻科の白鷹君と私の家庭を形容の出来ない、薄気味の悪い悪夢の中に陥れ始めた原因というのは、恐らく彼女自身も気付かなかったであろう、きわめて些細な出来事からであった。
お恥かしい話ではあるが開業々の好景気に少々浮かされ気味の私は、いつの間にか学生時代とソックリの瓢軽者に立ち帰っていた。つまらない駄洒落や、軽口や、冗談を連発して患者の憂鬱を吹き飛ばしたり、
「オイオイ。小さい解剖刀を持って来い。小さなメスだ。お前じゃないよ。間違えるな」
と姫草に言ったりしたが、そのたんびにユリ子はキャッキャと笑って立ち働きながら言った。
「まあ臼杵先生は白鷹先生ソックリよ」
「何だい。その白鷹って言うのは……俺に断らないで俺に似てるなんて失敬な奴じゃないか」
「まあ。臼杵先生ったら……白鷹先生は、あなたよりもズットお年上で、K大耳鼻科の助教授をしていらっしゃるんですよ」
「ワア。あやまったあやまった。あの白鷹先生かい。あの白鷹先生なら、たしかに俺の先輩だ」