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しょうじょじごく
少女地獄
夢野 久作
「少女地獄」黒白書房、1936(昭和11)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,174 字 · 206 页
何だか横浜の自宅に容易ならぬ事件でも起っているような気がして……妻が愛読している探偵小説の書き振りを見ても、留守宅に大事件が起るのは十中八、九コンナ場合に限っているのだから……と言ったような想像が、別段考えるでもないのにアトからアトから頭の中に湧き起って、たまらない焦燥と不安の中に私を逐い込んで行くのであった。あの時の私の脈膊は、たしかに百以上を打っていたに違いない。
けれどもそこで無人の二等車の柔らかいクッションの上にドッカリと腰を卸して、ナナの煙を一ぷく吹き上げると間もなく、私の心境にまたも重大な変化が起った。窓越しに辷って行く銀座の、美しい小雨の中のネオンサインを見流して行くうちに、現在、何が何だかわからないままに、無意味に、止め度もなく面喰らわされているに違いない私自身を、グングンと痛切に自覚し始めたのであった。
……俺はなぜアンナに慌てて飛び出して来たのだろう。なぜ、もっと突込んで姫草の事を白鷹氏に尋ねてみなかったのだろう。白鷹氏は彼女の事に就いてモットモット詳しく知っているらしい口吻であったのに……もう一度白鷹氏と会えるかどうか、わからなかったのに……と気が付いたのであった。