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しょうねんのし
少年の死
豊島 与志雄
「新潮」1916(大正5)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,400 字 · 27 页
然し造兵の女のことや庄吉の未来のことなどに就いては一言も云わなかった。
その晩庄吉は、表の四畳半にその妹さんと床を並べてねたのが一番嬉しかった。
「お前さん寝坊だってね。あたしもそうなんだよ。あした遅くまで寝坊くらべをしようね」
と彼女は床の中で云った。
然しその翌朝庄吉は常よりも早く起き上って何やかや用をした。仕事場に出かけるのが一番いやだった。
金さんの妹は庄吉を物影に呼んだ、そして五十銭銀貨を一枚くれた。
「黙っておいでよ、ね。そして辛抱して働くんだよ。親方にも私からよく云っておいてあげるから。」
「親方はよく姉さん所へ行くの?」
「ああよくおいでなのよ。」
庄吉はその日銀貨を大事そうに帯にくるんで仕事場に行った。時々大留さんから手間賃に貰った金はみんなそのまま小母さんに渡してしまって、彼は一文も小遣を貰わないのであった。そして繁などは「かあちゃん、一銭おくれよ。」といっては叱られながらもその金を自由に使っていることが、彼にはいまいましかった。然しその日は、もうそんなことはどうでもいいような気がした。
「おい今日は俺が奢るよ。」と庄吉は其日お茶の時に密と惣吉に云った。