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やまだちもんどう

山だち問答

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1946(昭和21)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,163 字 · 32 页

青空文庫

かれらは武器を投げ、巨漢といっしょにそこへ土下座をした。玄一郎も驚いたが、佐田権太夫はじめ広場を埋めた群衆の驚きはひじょうなものだった。……巨漢は大きな眼を子供のように輝やかせながら、

「あなたを捜していたのです」と玄一郎に向って云った、「……あのときから今日まであなたを探しながら廻国していたのです、あなたを捜しながら」

「でそれは、いったいどういうわけだ」

「正しく武士に二言のないという、あのときの純粋な御態度にまいったのです、あのように生きることができたら、いや人間ならあのように生きなくてはならぬ、そう思いました、そしてあなたを捜し当てたうえ、御家来の端に使って頂こうと相談をきめたのです、それだけを目的に今日までお捜し申しました、お願いです、どうかわれわれの望みをお協え下さい、お願いです」

「命がけのおたのみです」と、みんな口を揃えて云った、「……どうか御家来にして下さい、われわれを人間らしく生かして下さい、このとおりおたのみ申します」

世の中には、いつどこでなに事が起るかもわからないものだ。この「山だち騒ぎ」は藩主の耳に聞えた、左門氏西は事の珍しさに声をあげて笑い、「面白い、志もなかなか奇特だ、その者たちを玄一郎の家士にしてやれ、扶持は身から遣わそう」