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やまのうえのきとくものはなし
山の上の木と雲の話
小川 未明
「読売新聞」1922(大正11)年3月22~25日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,629 字 · 6 页
髪は、長く、黄金色の波のようにまき上がっていました。その雲は、おそらく大空の年若い女王でありましたでしょう。ゆうゆうと空を漂って、この山を過ぎるのでした。
木は、魂まで、ぼんやりとして、ただ夢心地になって、空を見上げていました。
「なんという美しい雲だろう。あんな美しい姿のものが、この宇宙にはすんでいるのだろうか?」
と、木は思って、ながめていました。
すると、その雲は、ちょうど木の立っている山の上にさしかかりました。木は、見上げれば、見上げるほど美しいので、気も遠くなるばかりでした。このとき、ちょうど、鈴を振るような、やさしい声をして、雲は下を見て、
「ああ、まっすぐないい木だこと。風にも、雪にも折れないで、よく育ちましたね。ほんとうに強い、雄々しい若い木ですこと。どんなにこの山の上に一人で立っているのではさびしいでしょうね。しかし、忍耐をしなければなりません。わたしは、また、きっと、もう一度ここへやってきますよ。それまでは、達者でいてください。いろいろのおもしろい話や、珍しいこの世界じゅうでわたしの見てきた話をしてあげますよ。」と、木に向かって雲はいいました。