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いけぶくろのみせ
山之口貘詩文集
山之口 貘
山之口貘『山之口貘詩文集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:池袋の店、沖縄帰郷始末記、おきなわやまとぐち、声をあげて泣く、詩とはなにか、装幀の悩み、つまり詩は亡びる、夏向きの一夜、野宿、暴風への郷愁、私の青年時代、ダルマ船日記、チャンプルー。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,477 字 · 93 页
人々は、みんな右往左往の状態で、棒片のようなものを手にしていたり、日本刀など片手にしているものもあったりして、またたく間に、巷は殺気立っていたのである。
白山上にさしかかると、
「君々」と、うしろの方から声をかけられた。振り返ると、巡査なのである。生れてはじめて巡査に呼び止められたのであるが、場合が場合なだけに、ぼくはおどおどした。
「社会主義者ではないんですがね」
ぼくは、とっさにそう云って、自分のよごれ切った霜降りの身装や、摺り切れている片ちんばの下駄や、何日も洗ったことのないぼうぼうとした長髪や、何日も放ったらかしになって髯のなかに埋まっているこの自分の、キリストを悪人に仕立てたみたいな風貌などを意識させられてしまったのである。
「どこから来たんだね」
「駒込からです」
「どこまで行くんだね」
「友人を訪ねて九段まで行くんです」
巡査は、それだけのことを、ぼくにきいたのであるが、それだけのことでは割り切れないものがぼくの人相には漂っていたものか、こちらが素直に答えているにもかかわらず、警察まで同行しろということになってしまったのである。
「ちょいと主義者みたいだからね」