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いけぶくろのみせ
山之口貘詩文集
山之口 貘
山之口貘『山之口貘詩文集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:池袋の店、沖縄帰郷始末記、おきなわやまとぐち、声をあげて泣く、詩とはなにか、装幀の悩み、つまり詩は亡びる、夏向きの一夜、野宿、暴風への郷愁、私の青年時代、ダルマ船日記、チャンプルー。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,477 字 · 93 页
すると、すぐにぼくは注意人物としてチェックされたのである。先生方の閻魔帳に記されたぼくの氏名には、赤い△印がついたのである。と言うのは、ぼくと同姓の山口校長の修身の時間に修身の教科書を衝立にして居眠りしてしまったからなのであった。居眠りをしたことについては、それだけの事情があってのことで、前夜、兄の結婚式のために夜ふかしをして、一睡もとらずに登校したからなのであったが、校長がその理由を不問のまま、眼にふれた現象だけをチェックして注意人物に仕立てたことは、ぼくの反感を唆るものがあったのである。このことを兄に話すと、小学校の図画の専科教師である兄がじっとしてはいられない風に、「校長に会って事情をよく話す」と言い出したのであった。短気者の兄だけにどうなることかとぼくはおもわずにはいられなかったが、ついそのままになったのであった。
いまでこそ沖縄の結婚式は東京並の形式になったらしいが、当時は古風で仰々しいもので、ぼくは兄の結婚をはじめ、姉とその次の姉の場合との三度も「提灯持」の役を経験したのであるが、祝宴は夜更までも続いて、宴のほとぼりは夜明けになっても醒めず少年のぼくなどさえ一睡も出来ないほどの騒ぎなのであった。