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いけぶくろのみせ

山之口貘詩文集

山之口 貘

山之口貘『山之口貘詩文集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:池袋の店、沖縄帰郷始末記、おきなわやまとぐち、声をあげて泣く、詩とはなにか、装幀の悩み、つまり詩は亡びる、夏向きの一夜、野宿、暴風への郷愁、私の青年時代、ダルマ船日記、チャンプルー。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,477 字 · 93 页

青空文庫

そんなこんなで、学校には愛想が尽きてサボル日が続いていた。まもなく兄夫婦が大阪へ出て行って、相ついで父母が石垣島へ渡り、弟や妹もそっちへ行ってしまい、ぼくだけが那覇の家に残ったのであった。そこへグジーからの破談状が舞い込んで来たのだ。理由として、ぼくの落第したり不良化したりのことが挙げられていたのであるが、ユタなど利用したほど念のいったことをする割に、諦らめるとなるとさっぱりしたもので、その点はなにかにつけ現在のぼくと変りはなかったのである。

ぼくが上京をおもい立ったのは、それからまもなくのことであった。そして、大正十一年の秋に上京した。東京駅はたしか丸の内側の乗車口、降車口だけで、タクシーを見かけた覚えはなく、人力車が殆どなのであった。柳行李といっしょに人力車に乗り、早稲田の諏訪町にあった同郷の友人の下宿に落ち着いたが、この下宿を振り出しにぼくの放浪生活ははじまったのであった。半月ほどして本郷新花町の下宿に移り、それから本郷台町の下宿、駒込片町の荒物屋の二階、駒込中里の先輩の家と不義理を重ねて転々としているうちに大正十二年九月一日の大地震なのであった。