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さざんか

山茶花

佐左木 俊郎

「文章倶楽部」1927(昭和2)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,001 字 · 10 页

青空文庫

「この忙しい収穫期、休んだりして……」爺は申しわけのように呟きながら家の中へ這入って行った。

「稼いだって、それ以上に損するようなごっちゃ、なんにもなんねえがら…… まあ、ゆっくり休ませえ。」

長作は、爺の後に跟いて家の中へ這入りながら、こんなことを言った。この言い草は、すでに、爺は幾度も幾度も繰り返して聞かされた。それで爺は、今では、若い時分、自分が屈指の稼人だった自慢はもう決してしなくなったのである。

平三爺は、事実、村でも屈指の稼人であった。また、非常なお人よしでもあった。そして爺は、よく他人から騙された。取引をすると、きっと、損をした。他人の借金の保証人になっては、借り主の代わりに払わされたことも度々あった。そんなわけで、爺は、他人よりも余計働いたにもかかわらず、親から承け継いだ財産まで、すっかり無くしてしまった。

そのことを気にしているために、爺は、折々、伜までが自分から離れて行ったように思って、非常に寂しい気持ちになることがあった。その思いは、年を重ねるに従って、だんだん強くなって行った。伜夫婦は、何かにつけて優しくしてくれるのだが、それをさえ、爺は、その底の方に、何かしら意地の悪いものがあるように感ずることがあった。