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いわたふじんのしをいたむ
岩田夫人の死を悼む
岸田 国士
「婦人倶楽部 第三十一巻第六号」1950(昭和25)年6月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,409 字 · 5 页
ちようど私たちがはいつて行くと、菜園になつている前庭のなかに、夕陽を浴びた二人の女性の、甲斐々々しく草むしりをしている姿をみかけた。いうまでもなく、その一人は静子夫人で、もう一人は、お嬢さんの巴絵さんである。
巴絵さんは、岩田君の前夫人マリイさんの血をうけた岩田家の一人娘、第二の母、静子夫人との間に、いわゆる生さぬ仲というような翳はどこにもみられない。はつきりいえば、この美しい関係は、静子夫人の純愛と、巴絵さんの聡明さとに負うものだとは信じるが、岩田君の立場からいえば、なんという幸運なことであろう。たゞ、結果としては、今や、健やかに伸び育つた巴絵さんのうちに、亡きマリイ夫人と、同じく亡き数に入つた静子夫人の、軽重のない祈願と、慈しみとが、見事に花咲き、実を結んだといえるばかりで、生涯に二度、妻を先立たせ、母を葬らねばならなかつた岩田君、並に巴絵さんの胸中は、私にしても、もはや察しようにも察しきれぬほどのものであろう。それだけにまた、ひとしお胸裂くる思いがするのである。
彼は、悔みに駈けつけた私に向つて、――「とうとう、おれは前科二犯になつたよ」