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みんざんのいんし

岷山の隠士

国枝 史郎

「大衆文芸」1926(大正15)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,095 字 · 19 页

青空文庫

ある日喧嘩をして数人を切った。

土地にいることが出来なかった。

このころ東巖子という仙人が、岷山の南に隠棲していた。

で、李白はそこへ走った。

聖フランシスは野禽を相手に、説教をしたということであるが、東巖子も小鳥に説教した。彼は道教の道士であった。

彼が山中を彷徨っていると、数百の小鳥が集まって来た。頭に止まり肩に止まり、手に止まり指先へ止まった。そうして盛んに啼き立てた。

それへ説教するのであった。

李白はそこへかくまわれることになった。

ある日李白が不思議そうに訊いた。

「小鳥に説教が解りましょうか?」

「馬鹿なことを云うな、解るものか。あんなに無暗と啼き立てられては、第一声が通りゃアしない」

「何故集まって来るのでしょうか?」

「俺が毎日餌をやるからさ。小鳥にもてるのもいいけれど、糞を掛けられるのは閉口だ」

一度彼が外出すると、彼の道服は鳥の糞で、穢ならしい飛白を織るのであった。

「一体道教の目的は、どこにあるのでございましょう?」

ある時李白がこう訊いた。

「つまりなんだ、幸福さ」

「幸福を得る方法は?」

「長命することと金を溜めることさ」

洵にあっさりした答えであった。