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しまもり

島守

中 勘助

「犬 附島守」岩波書店、1924(大正13)年5月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,146 字 · 37 页

青空文庫

栞にしようと思う。

南の浜には雑草のなかに小菊がさきみだれている。そして汀に立つただ一株の大木のほかにはいつも水をくんだり米をといだりするところに一本のみず木と柳が枝をまじえてるばかりでこれといった木もない。柳は水のうえへのりだして風の日にはなびき、雲のない日には影をうつす。その根もとには蘚苔の糸根かなにかいっぱいに紅く波に洗われ、渚には砂まじりの小石が綺麗にすいてみえる。そこで器を洗うと雑魚の群がよってきて指をせせる。時にはまた蟹が鋏をあげて這いよるのを匙ですくって水のなかへ投げてやるとそのまま深みへはい込んでしまう。ここは崖と森に北風をせかれて島のなかでいちばん暖い処である。春の野に似て和かな南の岡は湖のかなたに波うち、そこにほとほとと模様をおいた灌木、榛の木の小村へかよう小路、草を負うた馬や人のとおるのもみえる。秋になると皆が草刈りにゆくときいたが、見ればところどころ綺麗に刈られて幾団にも刈草が積まれている。

夕。鳥居へおりる石段のなかほどまでいって立っていた。北風がひゅうひゅうと雨をうちつける。右ての小暗い葦のなかに筌がひとつうちよせられてるのでほかにもありはしないかと見まわしてたら鷺が一羽あわただしくたって北浦のほうへ飛んでいった。