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しまもり

島守

中 勘助

「犬 附島守」岩波書店、1924(大正13)年5月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,146 字 · 37 页

青空文庫

透きまもなく繁りあった雑木のなかに皸だらけの獰猛な腕をひろげた栗の木の姿はあっぱれ武者ぶりではあるがかんじんの栗は一つもない。

「去年はあぶなくて通れないほどなってたが」といいながら心あたりの木から木へと捜しあるいても毬も落ちていないもので本陣は手もちぶさたな顔をして 南のほうに梨があるから と崖の腹をまわってゆく。私は栗のかわりにみちみち楢の実をひろう。本陣は 木曾のほうでは楢の実を豆にまぜて味噌をつくる とか 山奥へゆけば榧、はしばみ、ぶなの実もたべる などと話しながら先にたってゆく。南の崖に一株のけんぼ梨がある。これも「去年は降るほどなった」そうだが高いところに七つ八つあるばかり。下草をかきわけてやっと三つ四つさがしだした。堅くて小さいがかおりは高い。ぐみ、水引の花。

九日

朝なぎの浜におりる。山やまは雲の帳をかかげ、湖辺の灌木はさながら乙女となって朝の姿をうつし、梢にはなに鳥かきてまろらかな鄙歌をうたう。

夕。栗を落す。

十日

北風がひゅうひゅうと雪雲をはこんで今夜のうちに湖水が氷りはせぬかと思われる。かんかん火をおこし栗をむいて栗飯をたく。