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しまもり
島守
中 勘助
「犬 附島守」岩波書店、1924(大正13)年5月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,146 字 · 37 页
崖には杉の大木にまじって象皮色の欅の幹が枝をひろげ、瘤だらけのいたやは犀のように立ち、朽ちはてたえのみはおおかた枝葉を落しつくして葛蘿にまかれている。暖い日には障子をあけてこれらの喬木のおのこどもの雄雄しい武者ぶりをみて心を楽します。我がちに日光を貪る木木の簇葉は美しい模様を織りだして自然の天幕となり、ところどころのすきまからはきれぎれの空がみえ、その小さな空を横ぎって銀いろの雲がゆく。そのなかでのやや大きな天幕の裂けめはこの家に天の光をもたらす唯一の路である。それゆえ私には朝は遅く明けて日は時のまに暮れてゆく。夜になれば無数の巨幹はさながら魑魅となって人をおびやかし、星は簇葉をもれて冷たい木の実のようにみえる。
午後。晴。浜におりて茸を洗う。
夕。落栗をひろう。三つ四つ。妙高、黒姫、飯綱の嶺にさらさらと初雪がふってきのうまで恐しげにみえた山の姿がなつかしやかになった。なごりの雲が去りがてにたゆたっている。水の底にすいてみえる筌のなかへ小さな魚がしずかにくぐってゆく。彼はただ一夜だけれどもこの島の岸べにかかる安住の宿を見いだした。
うちよせるささ波の音をききながら小島が崎の洲をあるく。