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しまもり
島守
中 勘助
「犬 附島守」岩波書店、1924(大正13)年5月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,146 字 · 37 页
その高い枝の下にみごとにかかった大きな蜂の巣は毎日ここへくるときの一つの楽しみである。渦巻の浮彫をした甕形の王宮にはほうぼうに入口があり、暖い日には緋おどしの鎧をきた幾百の騎士が勇みたって湖のかなたに笑顔をもって彼らを待つ恋人の馨しい脣をすいにゆく。
十五日
帰る日がちかづいてからは毎朝目がさめるといいしれぬ寂しさが湧いてくる。きょうはお爺さんがひとり参詣にきて越後の国中頸城郡何村とかの者だと名のってから
「あんたここにこうしておいでになってなにか行でもなさるのですか、行をなさるには私どもがこうしてお話するのもお邪魔になるということですが」
といいながらそろそろと腰をおろした。私が
「いいえ行はやりません」
といったらすこしおちついて合点ゆかぬらしくひとの様子を見ながら 自分は今申すとおり越後の者でこの村の身うちへきのうから子供をつれて遊びにきて一晩泊って今お詣りにきたのだがこれからまた子供をつれて帰ろうと思う なぞとひとりで話している。お爺さんはお宮へ燈明をあげてきたとみえ
「あぶないから消しておいで」
と子供にいいつけてまだ腑におちないらしく なにをなさる なにをなさる とくどく尋ねる。