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しまもり
島守
中 勘助
「犬 附島守」岩波書店、1924(大正13)年5月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,146 字 · 37 页
またおりふし夢野の神はしのびやかにきて冷かな私の眠りをいろいろの絵筆に彩ってゆく。それらのことを私は日にちこまごまと日記につけておく。これはこの島に隠れて島守の織る曼陀羅である。
明治四十四年九月二十三日
簑笠をつけた本陣に船頭をたのんでひどい吹きぶりのなかを島へわたった。これから私の住居となる家は年に一度の祭礼に遠方からくる神官の泊るために建てたもので、羽目板はところどころずり落ち雨戸もまだついていないゆえほんの雨つゆのしのぎになるばかり、夏が過ぎればすぐ冬になるならいの山国の湖のなかにただひとつ浮いて出たようなこの島をめがけて周囲の山やまからおしよせてくる寒さをこの都人に防いでくれるほどの用にも立たない。積んである畳を幾枚か家のなかほどにしいて座敷とし、かたかたの床には白木造りの神輿、かたかたには炊事の道具をならべ、畳の黴をふき、あたりの塵を払ってみれば思ったより住みごこちのいい住居になった。梁のうえには笠鉾、万燈。枝と縄と藁で面白い粗野な織物になってる屋根裏からは太鼓、提灯などがぶらさがっている。本陣はそとから板屑を拾ってきて焚きつけをこしらえ、米はこのくらいに、水はこれくらいに、火はこうして と懇に教えながら昼飯の支度をして、やがて飯ができたのでちょこなんと畏って給仕をしてくれる。