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しまもり
島守
中 勘助
「犬 附島守」岩波書店、1924(大正13)年5月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,146 字 · 37 页
二十六日
朝。晴。きのう拾った杉の葉で火をおこしてるところへ本陣が鉈と鋸に豆板、頼んでおいた鰹節と池田さんからことづかった香煎をもってきて 餅は焼いてばかりたべずに雑煮にするがいい といって大きなひね茄子を二つ袂から出した。両手にあまるほど肥えて石みたいに堅い。また 麹が少いからまずかろうけれど と小さな瓶から味噌をくれた。そして俎がわりに拾ってきた板のうえへ鉈で鰹節をかいてくれたが私は雑煮は今度のことにして餅を焼いてたべる。かようにしてこの侘び住居には不相応な珍味のかずかずがそなわった。無性者の料理人は手軽をのみ心がけてなるべく材料を使わない。米も持ってきたなり袋に一杯、砂糖もそのまま、山田から送ってくれた浪華漬もまだあけない。玉子も笊に十ほど、葱が一本、はぜもろこしも残っている。今やこのソロモンの富を得た島守はこれらのものをどういう順序に腹のなかへしまい込もうかについてすくなからず苦労をする。本陣は焚きつけをつくりおえて煙草をすいながら味噌汁のかげんやなにか教えていった。
いつからかこの神輿のなかに夫婦者の鼠が住んでいる。彼らは私ごとき人間に平和な生活を邪魔されるのを腹立つかのように毎晩言語道断に荒れまわるのでゆうべから一きれの餅をいくつかに割って床のうえにほうっておくことにした。