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くずれるおにかげ

崩れる鬼影

海野 十三

「科学の日本」博文館、1933(昭和8)年7月~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,100 字 · 69 页

青空文庫

なるほど入り乱れた靴の跡が、点々として柔い土の上についています。

警部さんは、懐中電灯をつけて、その足跡を検べ始めました。

「オヤこれは変だな。足跡が途中で消えているぞ」

「消えているといいますと」

「ほら、こっちから足跡がやってきて、ほらほらこういう具合にキリキリ舞いをしてサ、向うへ駈け出していって、さア其処で足跡が無くなっているじゃないか」

「成る程、これア不思議ですネ」

「こんなことは滅多にないことだ。おお、ここに何か落ちているぞ。時計だ。懐中時計でメタルがついている。剣道優賞牌、黒田選手に呈す――」

「あッ、それは黒田君のものです。それがここに落ちているからには……」

「うん、この足跡は黒田君のか。黒田君の足跡は何故ここで消えたんだろう?」

蘇生した帆村探偵

そのとき、門の方に当って、けたたましい警笛の音と共に、一台の自動車が滑りこんできました。

「何者かッ」

というんで、自動車の方へ躍り出てみますと、車上からは黒い鞄をもった紳士が降りてきました。待ちに待った小田原病院のお医者さんが到着したのです。

「なァーンだ」

警官は力瘤が脱けて、向うへ行ってしまいました。