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くずれるおにかげ

崩れる鬼影

海野 十三

「科学の日本」博文館、1933(昭和8)年7月~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,100 字 · 69 页

青空文庫

「あれは衣服室なのです。それが貴郎、ゾロゾロ動き出して、まるで生物のように此の室を匍い廻ったんです」

「ああ、あの一件ですネ。するとあの洋服はすべて先生と奥様のだったというわけですね」

老婦人は黙って肯きました。

「いや、それですこし判って来たぞ」

「どう判ったの、兄さん」

「まア待て――」

兄はそれから庭へ下りてゆきました。警官たちは例の池のところに、何か協議を開いていました。私は兄を紹介する役目になりました。

「いや皆さん、私まで御心配かけまして」と兄は挨拶をしました。「ときに警官の方が一人見えないそうですね」

「黒田という者ですがネ。これ御覧なさい。この足跡がそうなんですが、黒田君は途中で突然身体が消えてしまったことになるので、今皆と智慧を絞っているのですが、どうにも考えがつきません」

「突然身体が消えるというのは可笑しいですネ。見えなくなることがあったとしても足跡は見えなくならんでしょう。矢張り泥の上についていなければならんと思いますがネ」

「それもそうですネ」

「僕の考えでは、黒田さんは、私を襲ったと同じ怪物に、いきなり掠われたんだと思いますよ。あの怪物が、追っかけた黒田さんの身体を掴え、空中へ攫いあげたのでしょう。