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いちろうのみせ

市郎の店

豊島 与志雄

「國民六年生」1942(昭和17)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,067 字 · 9 页

青空文庫

三

手伝ってあげるよ。」

そして、市郎は山川さんの家にいっしょについてゆきました。

三

その晩、市郎は元気に夜店へ出かけてゆきました。そして山川さんからおそわったとおりにやってみました。

玩具や絵本や絵葉書がたくさんそろってる屋台店のかたはしに、市郎はもったいぶって腰かけに坐り、前には、きれいな貝殻を十ばかりほどよく並べ、わきに貝殻のはいってる箱を置きました。

その箱から、市郎は手ごろな貝殻を一つ取り出して、それを念いりに磨きにかかりました。まず、柔い毛の大きな刷毛で、なんどもこすり、次に、白い粉をふりかけ、それを白ネルの布で拭き、それから、また白い粉をふりかけたり、刷毛でこすったりして、さいごに、赤い羅紗で拭き清めるのです。そんなことを、ごくゆっくりと、宝石かなんかを取扱うようにやるのです。

そして磨きあげられた貝殻は、燈火のもとで、まったく宝石のように光り輝いて見えました。

市郎がそんなことをしていますと、二人、三人と、立ち止って見物する者ができました。遂には、子供たちを交えて大勢の者が立ち止るようになりました。

山川さんのいったとおりでした。人々は、貝殻よりも、貝殻を磨いてる市郎に興味をおぼえたのでしょう。