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いちろうのみせ

市郎の店

豊島 与志雄

「國民六年生」1942(昭和17)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,067 字 · 9 页

青空文庫

そして、見物しているうちについ貝殻を買う気になりました。

子供たちはことにほしがりました。

そのようにして、貝殻がたくさん売れました。市郎がそこで磨きあげるのが間にあわないほどでありました。

そばのおばさんはびっくりしていました。

店をしまう時、首をかしげながら、市郎にささやきました。

「市ちゃん、どこでそんな智恵を仕入れてきたの。まったくねえ、品物を仕入れることよりか、智恵を仕入れることだね。」

市郎はただにこにこしていました。

だが、市郎は心配になりました。こんなに売れたら、貝殻がすぐなくなりそうで、おじさんがこんど新たに持ってきてくれるまで、持ちこたえられそうもありません。

翌日、市郎は山川さんのところに、報告かたがた相談に行きました。

「おばさんはびっくりしましたよ。お母さんはまた、涙を流して喜んでくれましたよ。だけど、品物がなくなったら、どうしましょう。」

山川さんは愉快そうに笑いました。

「心配するなよ。おじさんが貝殻を持ってきてくれるだろうし、僕も木彫の動物かなんか、ほかの品物をこしらえてあげよう。とにかく、市郎の店は、ただ売るだけでなくて、仕事もしてみせる店だと、その覚悟でやるんだな。