轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ほ

帆

宮本 百合子

「文芸春秋」1927(昭和2)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,973 字 · 25 页

青空文庫

「さあ」

神さんは、首を捩って、店の鴨居にかけてある古風なボンボン時計を見上げた。

「もう小一時間たちますね、かれこれ」

二人は、暫く黙って、聴くともなく二階の話声に耳を傾けた。折々低い声で何か云う男の声がするばかりで、穏かなものであった。

「いい塩梅に面倒なこともなくて済みそうだからいいけれど、厭な気持がしますですよ。いきなり、大塚いねと云う女がいる筈ですがって、私の顔をじろじろ見るんですもの――」

「――逃げたんでしょうか」

「さあ……」

神さんは、語尾を引っぱったまま再び注意を自分の頭の上に向けた。

すると、二階の襖が開き、

「じゃ、そんな訳ですから何分よろしゅう」

と云う、錆びた中年の男の大きな声がした。その男が先に立って、どしどし階子を下りて来た。藍子は、二畳の敷居へはみ出していた座布団を体ごと引っぱって、顔を店の方へ向けた。

「じゃ」

「そうですか、失礼しました」

送り出してしまうと、尾世川は、

「やあ」

と云いながら、照れたような生真面目な顔をして藍子の傍へとってかえした。

「どうも失礼してしまいました。どうぞ」

「いいんですか」

「ええ、どうぞ」

二階に、今の客が敷きのこして行った座布団が火鉢と茶器の傍にそのままある。