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ていてんをみざるのき

帝展を見ざるの記

寺田 寅彦

「中央美術」1920(大正9)年11月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,664 字 · 16 页

青空文庫

これもその方面の人々の深く考えてみるべき問題の一つではあるまいか。

彫刻部に関する私の心像は空虚である。ただ意味のありそうな表題と作物との関係を考えさせられるだけである。これは多分私が彫刻を全然理解しないためであろう。私には古いギリシアか仏像以外のものは分らない。ロダンでさえ分らないくらいである。それで帝展の彫刻から受取るものの総和はむしろやはり一種の怪奇の感だけである。

ここまで書いた時に私はふとあの有名な西郷の銅像や広瀬中佐の群像を想い出した。それと同時に、いつかスイスで某将軍の銅像を真赤に塗りつぶして捕えられ罰金を課せられた英国の学生の話を想い出した。……しかしこれは帝展とは何の関係もない事である。

これで筆を擱こうと思ってふと縁先の硝子障子から外を見ると、少しもう色付きかかった紅葉の枝に雀が一羽止ってしきりに羽根を繕っている。午過ぎの秋の日を一杯に浴びて気持のよさそうに羽根をふるわせたり、可愛らしい頭をかしげてみたりしている。紅葉の葉にはスペクトラムのあらゆる光彩が躍っている。しばらくじっと見ていたが、やっぱり天然の芸術は美しいと思った。