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こうだあやさんとしんせんどう

幸田文さんと神仙道

中谷 宇吉郎

「幸田文全集第六巻月報」中央公論社、1959(昭和34)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,105 字 · 3 页

青空文庫

文さんが文章を書くなどということは、夢にも考えていなかったので、露伴先生のこととして、何気なく読んでいた。しかしこの場面へ来たときには、思わずぞうっとした。そして露伴先生の神仙道は、文さんに引きつがれている、と感じた。

非常に驚いたので、あの小冊子の書評を、読売新聞だったかに書いたが、その題を「露伴の娘」とした。あとから聞いた話では、文さんは、露伴の娘といわれることを、非常に嫌っているそうである。しかしそれはいくら嫌いでも、仕方がない。今頃、神仙道の心を残存している人は、ほとんどいないであろう。文さんは、露伴の娘以外の何者でもない。

文さんの文章を評するのに、いろいろな表現が為されている。格調が高いとか、折り目正しいとか、漢文のもつ簡潔美があるとか、いろいろにいわれているが、それ等は、神仙道のもつ厳しい自己完成の面である。

それからよく鏡花に通ずるところがあるともいわれる。或いは予知とか潜在意識とかいう微妙な世界につらなっている、という批評もきく。これ等は明らかにいわゆる東洋の神秘性に通ずるものである。この神秘性は、古代東洋の心であって、神仙道によって培われたもの、というよりも、神仙道が其処から生まれてきたものであろう。