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こうふくのかんかく

幸福の感覚

宮本 百合子

「婦人画報」1940(昭和15)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,231 字 · 14 页

青空文庫

現在でのように、どっちかというといつも男対女のいきさつの形で、女の側からの女の幸福の探求がもち出されて来るような社会の時代的な性格に変化が生じて、男も人間の幸福ということを考えれば、女の幸福がその不可欠の条件であることを常識として身につけて、いわば最も直接な男の幸福問題として女の幸福も増す方向に動くようになって来るだろうということだけは確かに予見できる。

日本のような社会の伝習の中では、現在まだ男の幸福は、女として女が求めている幸福への条件を承認しないことで守られている部分もあるというような、哀れな危っかしい状態に置かれている。男も女も互の幸福については、互を自身の冒険として見なければならない状態である。つまり、人間としての合理的な幸福は、まだそんな低い、偶然にかけられている未熟な粗野な社会であるともいえるのである。

今のところ、女の幸福がしきりにいわれる歴史の根拠は、そのような意味で架空なものではないのだが、さて、幸福というものを私たちはどう考えあるいは感じているのだろう。

折々座談会などでそういう話題になったとき一番困惑するのは、現代の人間はまだ幸福というものをきわめて固定したものとして扱っているという点である。