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こうふくのかんかく
幸福の感覚
宮本 百合子
「婦人画報」1940(昭和15)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,231 字 · 14 页
特に女のひとは、どういうものか幸福、不幸という二つの漠然とした、しかも抜くことのできない観念を心のどこかに植えつけられている。そして、不幸になるまいと絶えず警戒しつつ、本体が何かということは自分の心にもはっきり感じられていない幸福を追っているように見える。
幸福というものを固定した観念で鋳りつけて、そういうものを求める生活の態度は大変人間の智慧のおくれた部分のあらわれであるということが一般にはなかなか納得できない。だって人間は昔から幸福を求めて来たではないか。ギリシア神話にある「金毛羊」の物語にしろ、メーテルリンクの「青い鳥」をもとめて旅立ったチルチル、ミチルの物語にしろ、求めるものは幸福であるという人間性を象徴した物語ではないか。だもの、きょうの私たちの心から、どうして「青い鳥」の幻が消えていよう、と抗議も出されそうである。そして、人生のある程度の経験から幸福について話すように一座に招かれた男女たちも、いつしか、幸福という二つの文字を互の間にやりとりしながら、目に見えないものを見えるように示そうと努力しながらついに大抵の場合不成功に終っている。