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おさなきひ

幼き日

小川 未明

「少年倶楽部」1929(昭和4)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,784 字 · 8 页

青空文庫

正ちゃんのお母さんは、かわいい坊やが、病気になったので、髪もとかさずに心配していました。

お医者さまは、正ちゃんを診察して、

「なるたけ、静かに、寝かしておかなければなりません。」といったので、お母さんは、家に帰ると、ふとんをしいて、正ちゃんを眠らせようとしました。

昨夜から、熱が高かったので、気持ちがいらいらしているとみえて、正ちゃんは、よく眠りませんでした。そして、むずかって、だだをこねてお母さんを困らせたのであります。

「さあ、おとなしくして、ちっとの間、ねんねなさいね。じきによくなりますから。」と、お母さんは、どうかして静かに、寝かしつけようとしていました。

「ねんね、ころころ、ねんねしな、

坊やは、いい子だ、ねんねしな。」

お母さんは、正ちゃんを抱いて、子守唄をうたいながら、へやのうちを歩きまわりました。そのうちに、やっと、正ちゃんは、すやすやと眠ったようでした。お母さんは、そっとふとんの上へおろして、

「あの山、越えて、どこへいった。」

口で子守唄をうたいながら、なおも、坊やの脊中をトン、トンと、軽くたたいていました。昨夜から、よく眠らなかったので、疲れたとみえて、正ちゃんは、ほんとうに、よく寝ついたようです。