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ゆうれい
幽霊
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1925(大正14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,972 字 · 24 页
その半年の間の会社の営業状態はこれまでにない好成績を示していたし、他に別段心配する様な問題もなかったので、ただ通り一ぺんの報告演説をすれば事は済むのであった。彼は百人近くも集った株主達の前に立って、もうそういう事には慣れ切っているので、至極板についた態度口調で話を進めるのであった。
ところが、暫くお喋りを続けている内に、無論その間には、聴衆である株主達の顔をそれからそれへと眺め廻していたのだが、ふと変なものが目に這入った。彼はそれに気附くと、思わず演説を止めて、人々があやしむ程も長い間、黙ったまま棒立ちになっていた。
そこには、沢山の株主達のうしろから、あの死んだ辻堂と寸分違わない顔が、じっとこちらを見詰めているのだ。
「上述の事情でござりまして……」
平田氏は気を取直した様に一段と声をはり上げて、演説を続けようとした。だがどうしたものか、いくら元気を出して見ても、その気味の悪い顔から目をそらすことが出来ないのである。彼は段々うろたえ出した。話の筋もしどろもどろになって来た。すると、その辻堂と寸分違わない顔が、平田氏の狼狽を嘲りでもする様に、いきなりニヤリと笑ったではないか。